元うどん

真面目です。

人のカバンをたくさん毎日持たされるようになった話

中学生になり、やや肥満気味になってきた娘に運動させようという親の意向から、私は運動部に入った。毎日の練習に土日の練習、朝練、自由時間がなくなりかつ全く興味のない活動、人間関係のトラブルの結果、ストレスで余計太った。

一年生のときの練習はまさにナンセンスの極みだった。素振りと球拾いとマラソンしかしていない。それも元ド素人の上級生がふわっと言ったことを信じてワッセワッセ一時間二時間する。顧問は稀に来てすぐ帰っていた。時間の無駄である。

当時は上級生の言うことは絶対である!という価値観の元、他の同級生も従っていたのでそういうものなのだろうと私も大人しく従っていた。スポーツのことはよくわからないからね。だが、だんだんと上級生の言うことがおかしくなってきた。髪型は肩まで、廊下であったら隅によってからお辞儀せねばならない、礼儀作法がどうのこうの。え…小学生の頃お前そんなんしてたん?一年早く生まれただけだよね?と内心思っていた。みんなはふむふむと聞いていた。そういうもんなのか。ずっと文化系のクラブだったから、運動の集まりはようわからん。私はぽっちゃりして上級生からの覚えもめでたくないのだ。

ある日、上級生が、一年生は靴下はきちんと3つにおらねばならん…と言い出し始めた。あっ気が狂っている、と私は思った。靴下の折り目がバタフライエフェクトを起こす事柄って足首の血管がちょいと抑えられる以外にねえよ〜マジで馬鹿じゃねえの???

これは、従わせるのが楽しいのだ。だが周りに合わせておとなしく従った。

一年生は当然上級生には不満たらたらであった。虐げられし我々はお互いを慰めあった。一年生は片付けを全てして施設の人にお礼を行って最後に帰る。街頭の灯り、影もない暗い帰り道。数人と疲れ切ってトボトボ歩きながら、がんばろうね…いつかうまくなるよ…。いつか楽しくなるよ…と話した。お互いに電話番号を交換したり、漫画やゲームの話をしたり、それなりに仲良くなっていた。二年生になったら…。

しかし、二年生になったころに周囲の同級生までも同じ言動をしはじめた。靴下。ぎぇーーー!!同級生の仲間たちが一年生に威張りだした時、私は絶望した。虐げられることが嫌だったんじゃないのか君たちは!?同じことをするのか!?私は真面目に混乱して真面目に憤った。多分根本的に体育会系に向いていなかった。宮沢賢治が愛読書なんだから仕方がない。よだかの星を暗証しろ!私は一年生に優しくした。真面目なのだ。そしてはっきりと周囲から浮いた。もともとぱっとしないあとをちょこちょことついてくるどうでもいいデブから異議を唱えし不協和音デブになったのだ。

その頃から、帰り道でじゃんけんをして負けたらカバン持ちというゲームが流行った。私以外の子は示し合わせはじめたのか、私は毎回、負けた。毎回5つくらいのあの中学生の殺人的に重いカバンを長い距離えっちらおっちら運んだ。みんな、一対一だとそれぞれ、話してくれるし楽しく、優しく、してくれる。でもカバンは私が毎回持つ。他のみんなは楽しそうに先を歩いて明るい笑い声が聞こえる。毎日毎日続いた。時々は他の子が持つときもあったけど、稀だった。けたたましい笑い声。なにか、そう、そういう目。腹に黒い黒い、苦い重りが溜まる。

ある日、またカバンを私が全部持つことになった。ふと顔をあげると、いつも真面目で優しい朴訥とした人柄のTさんの目に、喜色が浮かんでいるのがよくわかった。自分は仲間はずれではないという安全からの愉悦。ここに自分より劣ったものがいるという楽しさ。抑えた顔はしていたけど、ひどく楽しそうだった。娯楽になったのだ。はぁ。この子もこういう顔をするのだな、とわかった途端、私はひどい虚脱感に襲われた。その日のカバンはどうしたか覚えていない。泣きながら家に帰って、そのままもう部活を辞めた。それから部活で一緒だった子たちには無視されるようになった。あれだけ仲良くしていたのに…。私はとても悲しかった。

いじめだこれ!と気づいたのはだいぶたってからだったが、私はどうやらそういう、人になにか害をなされる側の人間なのだ…と思った。うまくできないダメ人間。いじめられた方は自分を恥じて相談ができない。

 

 

その後、真面目系クズなのが幸いしたのか、コンピューター室の先生に、部活辞めたんだよね?放課後に時々でいいから掃除を手伝って!たのむ〜〜〜!コンピュータで遊んでいいから!と他のクラスメイトと一緒に誘われた。

先生のおごりのマクドを食べながら、フロッピーディスク魔導物語やブロックでポンを遊んだりBASICを教えてもらったりする。先生が直に連れてくる優等生キャラばかりだったので基本的に和やかだった。そこから知り合いが増えた。先生には、BASICでなんか作って〜とか謎のお絵かきソフトでなんか落書きして〜と頼まれたりもしていた。

あ〜〜〜部活辞めてよかったにゃ〜〜〜〜と思った。部活の人たちのことは普通に忘れていった。時々睨まれたり無視も続いていたけど、部活のコミュニティじゃなかったらどうということもない相手だったのにそのうち気付いた。

みなのものは貝の火を読んで身悶えすべし!

 

後に聞いたところによると、学校にはコンピューター部ができたらしい。

 

先生、ありがとう〜。